はじめに
- Q飼い犬が人を噛んでしまった。何をしないといけない?謝罪したからそれでいい?
- A
飼い犬が他人を噛んでしまった場合は、条例にもよりますが、東京都であれば24時間以内に咬傷届を提出する必要があります。これは義務であり、謝罪したから終わりではありません。怠ると罰則もあります。
散歩中等で飼い犬が人を噛んでしまったらどうしますか。ほとんどの場合は相手に謝罪してそれで終わりかもしれません。しかし、自治体にもよりますが、東京都だと届出をしなければならず、怠ると拘留又は科料に処されます。知らなかったでは大変です。
本コラムはペット法務専門の行政書士が執筆しております。
ペット・動物に関する法手続きの専門家ですのでご安心下さい。
バレないと思っていても、噛まれた相手方も届出を出すことができ、相手が出してしまうと「噛んだ犬の飼い主からは届出が来ていない」とバレてしまいます。
本コラムでは犬が人を噛んだ時に、届出をいつまでに出さないといけないのか、その他するべき事を解説します。読んでいただくことで、いざとなった際には迅速に行動することができ、相手方とのさらなるトラブルも防止することができます。
結論、飼い犬が人を噛んだ時は、自治体にもよりますが、東京都の場合は24時間以内に咬傷届を出さなければいけません。
咬傷(こうしょう)の届出
飼っている犬が他人を傷つけてしまった場合は、東京都の条例では事故発生から24時間以内に咬傷の届出を行わないといけません。自分の犬が噛みついてしまったという届出です。
第二十九条 飼い主は、その飼養し、又は保管する動物が人の生命又は身体に危害を加えたときは、適切な応急処置及び新たな事故の発生を防止する措置をとるとともに、その事故及びその後の措置について、事故発生の時から二十四時間以内に、知事に届け出なければならない。東京都動物の愛護及び管理に関する条例
23区であれば事故発生場所の最寄りの区保健所が提出場所になります。
事故発生直後にさらなる事故防止の為にペットを他人から遠ざけ、怪我をしてしまった人の救護をしてください。その後咬傷の届出を提出してください。24時間以内なので急がないといけません。
獣医師に検診させる義務
さらに、咬傷の届出に加えて、事故発生から48時間以内に獣医師に検診させる義務が生じます。以下は東京都動物の愛護及び管理に関する条例の第二十九条第二項です。
2 犬の飼い主は、その犬が人をかんだときは、事故発生の時から四十八時間以内に、その犬の狂犬病の疑いの有無について獣医師に検診させなければならない。東京都動物の愛護及び管理に関する条例
東京都以外では獣医師の検診義務がない場合もありますが、お相手は狂犬病の被害にあうかもしれないという心配が第一にくることは想定できます。こちらから先に検診する旨をお伝えすることでお相手も少しは安心していただけるかもしれません。
相手方の怪我の治療費
お相手は怪我をしている可能性が高いです。後々金額で揉める前に話し合いをして治療費等を決めておきましょう。また、金額が決まったら客観的にわかる形で残しておくと良いです。
各自治体の条例等を紹介
条例等の内容は各自治体によって変わってきます。以下に各自治体での内容を記載しておりますが、内容が古くなっていたり、より個別の自治体で別の条例等が存在する場合がありますので詳しくは当該自治体のサイトを閲覧いただくか、当サイトにお問い合わせください。
各自治体と手続内容(クリックorタップで展開します)
自治体 | ペットが他者を傷つけた際の手続き要約 |
---|---|
北海道 | 特定動物が人を傷つけたときは、事故発生から24時間以内に知事へ届け出なければいけない。 |
青森県 | 飼い犬が人を噛んだときは速やかに知事に届け出なければならない。 |
岩手県 | 飼い犬が人を傷つけたときは所轄保健所長に届け出て、指示を受けなければならない。 |
秋田県 | 飼い犬が人を傷つけたときは直ちに知事に届け出なければならない。 |
宮城県 | 飼い犬が人または家畜(家きんを除く)をかんだときは、かんだ日の翌日から起算して3日以内に知事に届け出なければならない。飼い主はその届け出の日から起算して20日以内にその犬の狂犬病に係る診断書を知事に提出しなければならない。 |
山形県 | 飼い犬が人を傷つけたときは直ちに知事に届け出なければならない。 |
福島県(いわき市) | 飼い犬が人をかんだときは速やかに市長に届け出なければならない。飼い主はその犬の狂犬病の疑いの有無について獣医師に診察を受けさせなければならない。 |
茨城県 | 動物が人を傷つけたときは、事実を知ったときから24時間以内に知事に届け出なければならない。その犬を獣医師に検診させ、結果を知事に届け出なければならない。 |
栃木県 | 飼い犬が人を傷つけたときは直ちに知事に届け出なければならない。飼い主は直ちにその犬が狂犬病であるか獣医師に検診させ、結果を知事に届け出なければならない。 |
千葉県(千葉市) | 動物が人を傷つけたときは速やかに市長に届け出なければならない。犬が人をかんだときは届け出を行うとともに、獣医師の検診を受けさせ、遅滞なく狂犬病鑑定書を市長に提出しなければならない。 |
群馬県 | 飼い犬が人をかんだときは速やかに知事に届け出てその指示を受けるとともに、獣医師に検診させなければならない。 |
埼玉県 | 飼い犬が人をかんだときは直ちに知事に届け出なければならない。また、直ちに狂犬病の疑いの有無について獣医師に検診させなければならない。 |
東京都 | 動物が人を傷つけたときは、事故発生から24時間以内に知事に届け出なければならない。飼い犬が人をかんだときは、事故発生から48時間以内に狂犬病の疑いの有無について獣医師に検診させなければならない。 |
神奈川県 | 飼い犬が人を傷つけたことを知った時は直ちに知事に届け出なければならない。 |
新潟県 | 飼い犬が人を傷つけたときは直ちに知事に届け出なければならない。また、直ちに獣医師に検診させなければならない。 |
長野県 | 飼い犬が人を傷つけたときは遅滞なく知事に届け出なければならない。その後遅滞なく狂犬病の疑いの有無について知事が指定する獣医師に検診させなければならない。 |
富山県 | 特定動物が人を傷つけたときは遅滞なく知事に届け出なければならない。 |
石川県 | 飼い犬が人をかんだときは直ちに知事に届け出るとともに獣医師により診断を受けさせなければならない。また、事故発生から2週間以上堅固な檻に入れるか堅固な口輪をつけなければならない。 |
山梨県 | 飼い犬が人を傷つけたときは直ちに知事に届け出なければならない。 |
静岡県 | 特定動物が人を傷つけたときは速やかに知事及び警察官に届け出なければならない。 |
福井県 | 飼い犬が人をかんだときは直ちに知事へ届け出をし、狂犬病の疑いの有無について獣医師に検診させなければならない。 |
岐阜県 | 飼い犬が人をかんだときは直ちに知事へ届け出をしなければならない。また、その犬を獣医師に検診させなければならない。その後、口輪をつけるなどの措置を行い、かんだ日から2週間監視し異常があった場合は直ちに知事に届け出なければならない。 |
愛知県 | 飼い犬が人をかんだときはその事実を知った時から48時間以内に知事に届け出るとともに、狂犬病の疑いの有無について獣医師に検診させなければならない。 |
滋賀県 | 飼い犬が人を傷つけたときは直ちに知事に届け出なければならない。また、直ちに狂犬病の疑いの有無について獣医師に検診させ、その結果を速やかに知事に届け出なければならない。 |
三重県 | 飼い犬が人を傷つけたときは直ちに知事に届け出なければならない。また、48時間以内に狂犬病の疑いの有無について獣医師に検診させなければならない。 |
京都府 | 飼い犬が人を傷つけたときは口輪をつける等措置をとるとともに、24時間以内に知事に届け出なければならない。 |
奈良県 | 飼い犬が人を傷つけたときは直ちに知事に届け出なければならない。 |
大阪府 | 飼い犬が人をかんだことを知ったときは直ちに知事に届け出なければならない。 |
和歌山県 | 飼い犬が人を傷つけたときは遅滞なく知事に届け出なければならない。また、その犬が人をかんだときは遅滞なく狂犬病の疑いの有無について獣医師に検診させ、その結果を知事に届け出なければならない。 |
兵庫県 | 飼い犬が人を傷つけたときは直ちに知事に届け出なければならない。また、その犬が人をかんだときは狂犬病の疑いの有無について速やかに獣医師に検診させなければならない。 |
鳥取県 | 飼い犬が人を傷つけたときは直ちに知事に届け出なければならない。また、その犬が人をかんだときは狂犬病の疑いの有無について直ちに獣医師に検診させなければならない。 |
岡山県 | 動物が人を傷つけたときは直ちに知事に報告しなければならない。また、飼い犬が人をかんだときは前記に加えて直ちに狂犬病の疑いの有無について獣医師に検診させ、診断書を知事に提出しなければならない。 |
島根県 | 飼い犬が人を傷つけたときは遅滞なく知事に届け出なければならない。その後、知事から命じられた場合は、獣医師に検診させなければならない。 |
広島県 | 飼い犬が人を傷つけたときは、その事実を知った時から24時間以内に知事に届け出なければならない。また、その犬が人をかんだときは、事故発生から48時間以内に狂犬病の疑いの有無について獣医師に検診させ、その結果を遅滞なく知事に届け出なければならない。 |
山口県 | – |
香川県 | 飼い犬が人をかんだときは直ちに知事に届け出なければならない。 |
徳島県 | 飼い犬が人を傷つけたことを知ったときは、直ちに知事に届け出なければならない。また、その犬が人をかんだときは遅滞なく狂犬病の疑いの有無について獣医師に検診させなければならない。 |
愛媛県 | 飼い犬が人を傷つけたときは直ちに知事に報告し、指示を受けなければならない。 |
高知県 | 飼い犬が人を傷つけたときは直ちに知事に届け出なければならない。また、その犬が人をかんだときは直ちに狂犬病の疑いの有無について獣医師に検診させなければならない。 |
福岡県 | 動物が人を傷つけたときは直ちに知事に届け出なければならない。 |
佐賀県 | 飼い犬が人を傷つけたときは直ちに知事に届け出なければならない。また、その犬が人をかんだときは直ちに狂犬病の疑いの有無について獣医師に検診させなければならない。 |
大分県 | 飼い犬が人をかんだときは直ちに狂犬病の疑いの有無について獣医師に検診させなければならない。 |
長崎県 | – |
熊本県 | 飼い犬が人をかんだときは直ちに獣医師に検診させなければならない。 |
宮崎県 | 特定動物が人を傷つけたときは直ちに知事に届け出なければならない。 |
鹿児島県 | 飼い犬が人を傷つけたときは直ちに知事に届け出なければならない。 |
沖縄県 | – |
文章は簡易なものに置換しています。また、特定動物と飼養している犬等が並列されている場合は特定動物の記述は省略しています。特定動物とは政令で「人の生命、身体又は財産に害を加えるおそれがある動物」と定められている動物になります。狂犬病の検診義務がない場合でも施行規則で指定されている場合があります。「-」のものは当サイト管理人が条例を探せなかったものになります。いずれの場合でも正確な情報は当該自治体のサイトを閲覧するか当サイトにお問い合わせください。
おわりに
本コラムでは飼い犬が人を噛んだら咬傷届が必要ということに関して解説いたしました。
飼い主さんでも知らない人が多いのではないでしょうか。噛んでしまったら謝罪をするのは当たり前ですが、相手が犬に関して知識が乏しい場合は狂犬病をはじめ、様々な病気に感染するのではという心配が先行する可能性があります。放置していると後からトラブルになる可能性もありますので、咬傷届を出し、獣医師に検診させることで相手方にも安心してもらってください。
お住まいの地域の条例を把握し、お相手のためにもご自身とペットのためにも必要な手続きを把握しましょう。