はじめに
- Qカラスをペットとして飼うことは可能?
- A
ペットショップなどでも稀に扱っているところがあり、ペットとして飼育することは可能です。野生のカラスを捕獲する場合は、法律上は条件を満たせば可能ですが、環境省の指針としては事実上不可能とお考えください。
犬や猫を好きな人がいるようにカラスを好きな人も居ます。管理人もカラスが大好きです。しかし、犬や猫と違い、カラスをペットとしている人はほとんど聞きません。
本コラムはペット法務専門の行政書士が執筆しております。
ペット・動物に関する法手続きの専門家ですのでご安心下さい。
カラスをペットとして飼ってはいけないのでしょうか。法令を元に解説いたします。
鳥獣保護管理法
カラス等の鳥類や哺乳類に属する野生動物の保護・管理、狩猟の適正化に関して規定しているのが鳥獣保護管理法です。
狩猟鳥獣
この法律の第二条第七項では「狩猟鳥獣」という言葉の定義を次のように規定しています。
7 この法律において「狩猟鳥獣」とは、希少鳥獣以外の鳥獣であって、その肉又は毛皮を利用する目的、管理をする目的その他の目的で捕獲等(捕獲又は殺傷をいう。以下同じ。)の対象となる鳥獣(鳥類のひなを除く。)であって、その捕獲等がその生息の状況に著しく影響を及ぼすおそれのないものとして環境省令で定めるものをいう。
鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律 | e-Gov法令検索
また、環境省令でミヤマガラス、ハシボソガラス、ハシブトガラスはこの狩猟鳥獣に該当すると規定されています。以降この3種のカラスのことは単に「カラス」と表記します。
制限規定
鳥獣保護管理法第八条では鳥獣の捕獲や卵の採取を次のように禁止しています。
第八条 鳥獣及び鳥類の卵は、捕獲等又は採取等(採取又は損傷をいう。以下同じ。)をしてはならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
一 次条第一項の許可を受けてその許可に係る捕獲等又は採取等をするとき。
二 第十一条第一項の規定により狩猟鳥獣の捕獲等をするとき。
三 第十三条第一項の規定により同項に規定する鳥獣又は鳥類の卵の捕獲等又は採取等をするとき。
鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律 | e-Gov法令検索
第八条は例外規定があり、第一号では次条 (第九条) 第一項の許可を受け、その許可に係る捕獲等は例外とされています。第九条第一項の規定は次の通りです。
第九条 学術研究の目的、鳥獣の保護又は管理の目的その他環境省令で定める目的で鳥獣の捕獲等又は鳥類の卵の採取等をしようとする者は、次に掲げる場合にあっては環境大臣の、それ以外の場合にあっては都道府県知事の許可を受けなければならない。
鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律 | e-Gov法令検索
まず目的が適しているかですが、学術研究、保護又は管理、その他環境省令で定める目的とあります。そして、環境省令で揚げている目的の中に「愛玩のための飼養」があります (施行規則第五条第二号)。よって目的はクリアです。
「次に掲げる場合」とあるのは、
- 鳥獣保護区の区域内で捕獲等を行う場合
- 希少鳥獣の捕獲等である場合
- かすみ網を使用して捕獲等を行う場合
と規定されています。カラスは希少鳥獣には当てはまらないので、鳥獣保護区でない場所で、かすみ網を使用しなければ都道府県知事の許可で済みます。
第九条の第三項では環境大臣又は都道府県知事は次の場合に当てはまらなければ許可をしなければいけないと規定されています。
- 捕獲等の目的が第一項の目的と適合しないとき
- 捕獲等によって鳥獣の保護に重大な支障を及ぼすおそれがあるとき
- 捕獲等によって第二種特定鳥獣管理計画又は、特定希少鳥獣管理計画に係る鳥獣の管理に重大な支障を及ぼすおそれがあるとき
- 捕獲等に際し、住民の安全の確保や、指定区域の静穏の保持に支障を及ぼすおそれがあるとき
目的は既にクリアしています。乱獲等であれば別ですが、それ以外の3つも当てはまらない場合がほとんどであるように読めます。
よってカラスは許可を受ければ法律上なんの問題もなく捕獲できることになります。
申請等
申請を行う際には、環境省令で定められた事項を記載した申請書を提出します。規定では鳥獣の捕獲等又は鳥類の卵の採取等をしようとする事由を証する書面 (証明書という) を要求していますが、自ら飼養するために鳥獣の捕獲又は卵の採取をしようとする場合は、証明書を添えなくてもよいとあります。
つまりペットとして飼いたい場合は、必須なのは申請書だけになります。
飼養に関して
鳥獣保護管理法第十九条では捕獲した鳥獣を飼養する際に、登録することを義務付けています。しかし、この規定では狩猟鳥獣は除外されているので、カラスを飼う時に登録する必要はありません。
また、同法第二十七条では、違法に捕獲又は輸入した鳥獣の飼養、譲渡し等の禁止を定めていますが、法律に則って合法的にカラスを捕獲、飼養することは可能なので、許可を受けて、法律上問題なく飼養している場合にはこの条文には当てはまりません。
結論
カラスは飼養することが出来ます (あくまで条文上では)。
しかし、法律に則って許可をとれば捕獲することも可能ですが、人間には慣れていないため、ペットとするのは厳しいと思います。数は少ないですが、カラスを販売しているペットショップもありますので、そこでお迎えするのが現実的だと思います。
追記 | 環境省の指針
3 愛玩飼養の取扱い鳥獣の保護及び管理を図るための事業を実施するための基本的な指針(PDF)
愛玩のための飼養の目的で鳥獣を捕獲することについては、違法な捕獲や乱獲を助長するお
それがあることから、原則として許可しない。また、鳥獣は本来自然のままに保護することが望ましいという考え方に従い、その規制の強化に努めるものとする。一方、野鳥の愛玩飼養の慣習が古くからあるものの、飼養の対象が外国産の鳥類等に限定されてしまうこと等に鑑み、これまで一部認められてきた愛玩のための飼養を目的とする捕獲については、今後廃止を含めて検討する。この検討は、鳥獣を愛でることの意味、歴史的観点、動物福祉的観点、国内外の生物多様性の確保の観点に加え、鳥獣の飼養に対する考え方の変化も踏まえた鳥獣の愛玩飼養に関する総合的な観点から行う。
環境省としては愛玩目的では原則許可をしない方針のようです。また、ペット目的での捕獲に関しても廃止を検討するとあります。理由として挙げている「違法な捕獲や乱獲を助長するおそれがある」というのは一理あります。残念ではありますが動物に対して不当な扱いをする人がいることを踏まえるとルールが厳しくなっていくというのは仕方のないことかもしれません。
おわりに
本コラムではカラスを飼うことは違法なのか解説いたしました。
省令などにペットとして飼う可能性があることを前提として規定された条文があることからも法律上は問題ありません。
しかし、やはり自分で捕獲して飼うというのは現実的ではないので、カラスを販売しているペットショップを探すのが現実的です。