はじめに
- Q飼い犬がよく吠えるけど、犬は吠えるものだし特に問題ないよね?
- A
過去の判例には犬が吠えたことに起因して怪我をさせてしまった事例に対し賠償請求を認めたものがあります。犬が吠えるのは飼い主としては普通ですが、犬を飼っていない人にとってはそうではありません。
犬によって異なりますがよく吠える犬もいます。大きな音や犬が苦手な人にとっては、すれ違いざまに急に吠えられてビックリしてしまうこともあるでしょう。飼い犬が吠えて驚かせてしまい、相手が転倒等をして怪我をした場合は損害賠償請求を受ける可能性があります。
本コラムはペット法務専門の行政書士が執筆しております。
ペット・動物に関する法手続きの専門家ですのでご安心下さい。
本コラムではたとえ吠えただけであっても、それにより怪我をさせてしまうと損害賠償請求をされる可能性があることについて解説いたします。飼い主さんにはそういう事態を避けるためにもしつけをしっかりするようにしましょう。
結論を言うと、犬が吠えて相手を驚かせ、転倒等で怪我をさせると動物の占有者等の責任により賠償責任を負う可能性があります。
動物の占有者等の責任
民法第七百十八条には次のような規定があります。
第七百十八条 動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。
民法 | e-Gov法令検索
犬が吠えたことにより相手が驚いて転倒し怪我をすることは、犬が吠えたことと怪我をしたことに因果関係があると認められる場合があります。その場合は動物の占有者、多くの場合は飼い主さんがその怪我に対して賠償する責任を負います。
損害賠償請求を認めた判例
横浜地方裁判所平成13年1月23日判決では犬が吠えたことにより相手が歩行の安定を失い転倒、怪我をしてしまったことに対して合計400万円以上の損害額を認めています。
また、犬は吠えるものであるから、吠えさせないようにすることは飼い主の注意義務に含まれていないという主張もあるかもしれませんが、裁判所は、犬が吠えることを容認することは犬好きを除く一般人にとっては耐え難いものであり、犬の飼い主にはみだりに吠えないよう調教する義務があるとしています。
おわりに
本コラムでは犬が吠えて怪我をさせると賠償請求の可能性があることについて解説いたしました。
犬が吠えるのは生物として自然かもしれませんが、飼い主さんの責任として少なくとも人前で吠えないようしつけをするようにして下さい。犬が吠えて相手が怪我をしてしまうのは賠償云々を除いても、両者にとって良いものではありません。動物と人との共生のためにも、両者が譲歩して生活していく必要があります。