はじめに
- Q近所の犬が夜中も吠えていて眠れない。対処の方法は?
- A
犬の騒音問題は度々起こります。口頭での注意を行って解決することが望ましいですが、飼い主さんがしつけを放棄しているような場合は内容証明郵便を用いて心理的プレッシャーを与える方法があります。
ご近所の飼い犬の鳴き声等による騒音に悩まされている方はどう解決すればいいのかわからない方も少なくはありません。直接伝えたとしても「気をつけます」だけで終わってしまい、何も改善されず、、、ということも起こり得ます。
市役所に伝えてそちらから注意してもらったり、マンションの場合は管理組合を通して注意してもらうということもできますが、そもそも周りの人のことなんて気にしてないという相手に対してはあまり効果がありません。
環境省では「騒音に係る環境基準について」というものを出しておりますが、これも維持されることが望ましいというだけであって強制力はありません。
本コラムはペット法務専門の行政書士が執筆しております。
ペット・動物に関する法手続きの専門家ですのでご安心下さい。
本コラムでは犬の騒音問題に対する内容証明郵便を用いた解決案について解説いたします。
実際のところ動物の騒音を強制的に辞めさせる法的手段は事実上ない状態です。本コラムではこれに対して内容証明郵便というものを使用して対処する解決案をご紹介します。
犬の騒音は違法か
直接的に違法と言える法令はありません。例えば次の規定を見てみます。
動物愛護法の規定
動物の愛護及び管理に関する法律には次のような規定があります。
第七条 動物の所有者又は占有者は、命あるものである動物の所有者又は占有者として動物の愛護及び管理に関する責任を十分に自覚して、その動物をその種類、習性等に応じて適正に飼養し、又は保管することにより、動物の健康及び安全を保持するように努めるとともに、動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加え、生活環境の保全上の支障を生じさせ、又は人に迷惑を及ぼすことのないように努めなければならない。この場合において、その飼養し、又は保管する動物について第七項の基準が定められたときは、動物の飼養及び保管については、当該基準によるものとする。
動物の愛護及び管理に関する法律 | e-Gov法令検索
動物によって生活環境の支障を生じさせないようにと言っていますが、「努めなければならない」とあり、努力義務で強制力はありません。よってこの規定を根拠に何かを出来るかと言われると少し厳しいものになります。
慰謝料請求を認めた判例
騒音に悩まされた近隣住民に慰謝料請求が認められた判例はあります。
問題となるのは近隣住民の受任限度を超えるかどうかということです。受忍限度を超えていると認められると慰謝料請求が認容される可能性があります。ただし、判例は個別具体的な事案に対してのものなので、やはり直ちに違法とはなりません。
内容証明郵便の活用
騒音トラブルは最終的には慰謝料の請求等で裁判上で争うこともありますが、初めから弁護士に依頼するのは費用面で高く付きます。お金に余裕のある方であれば弁護士に頼んでしまうのが一番良いでしょう。しかし、通常はそうではないかと思います。では、後々の裁判上での争いがある可能性を見据えて今できることはなにかあるでしょうか。
今までの注意やお願いの履歴を証明できれば裁判でも役立ちそうです。ただ、「いついつにこういう注意しましたよね」と言っても「記憶にないですけど」と言われてしまうのがオチです。そこで用いるのが内容証明郵便です。
内容証明郵便とは
内容証明郵便とは「誰が」「誰へ」「どんな内容」を「いつ」出したかを証明できる郵便です。騒音問題以外でも幅広く活用することができ、例えば金銭の支払い請求や、重要事項の通知など「数字が違う」や「聞いてない」といったことが起こるとマズイような場合に内容証明郵便を用いることで客観的にこれを証明することが可能です。
心理的なプレッシャー
また、口頭の注意や一般的な手紙での注意に比べて「内容証明」と堅い印象があります。また、当所にご依頼いただければ行政書士の名前、事務所名、職印を押印した文書を送りますので「ちゃんと対応しないとマズそう」といった心理的プレッシャーを与えることができます。
要求内容には注意
内容証明郵便は確かに心理的プレッシャーを与えることができます。しかし、あまりに強い要求を入れてしまうと「なら弁護士に頼んで争ってやる」となりかねません。内容証明郵便には「無視するのはマズそうだし、これくらいの要求なら受け入れるか」といった具合の塩梅が必要です。
弁護士に相談する前にまずは安価に実施できる内容証明郵便から試してみるのはいかがでしょうか。
おわりに
本コラムでは犬の騒音問題を解決するための内容証明郵便の効果的な使い方について解説いたしました。
飼い犬の騒音トラブルはご近所ということもあり中々解決に困る問題です。注意やお願いといった形で解決できるのがベストですが、そもそも他人の注意は聞き入れないという立ち位置の相手には内容証明といった手法もありますのでご検討ください。