はじめに
- Q飼養施設は何を準備すればいい?
- A
動物取扱業で必要な飼養施設には、設備的要件、事業に必要な権原を有していることの証明、構造・規模・管理の要件、備える設備の構造・規模・管理に関する要件があり、すべて満たす必要があります。
第一種動物取扱業の登録を受ける際には、一部の出張・訪問のみの形態を除き飼養施設の設置が要件の一つとなります。
本コラムはペット法務専門の行政書士が執筆しております。
ペット・動物に関する法手続きの専門家ですのでご安心下さい。
本コラムでは第一種動物取扱業の登録の際に必要な飼養施設に関する規定を解説いたします。
飼養施設と備える設備の要件
飼養施設の要件
飼養施設に備える設備
第一種動物取扱業の登録を受ける際に、飼養施設を設置するあるいは設置する予定の場合は法律により飼養施設の所在地、構造及び規模、管理の方法に加え、次に掲げる設備等の配置を明らかにした飼養施設の平面図及び飼養施設の付近の見取図を提出する必要があります。
- ケージ等 (動物の飼養又は保管のために用いるもので、おりや水槽等の設備)
- 照明設備 (営業時間が日中のみである等は除く)
- 給水設備
- 排水設備
- 洗浄設備 (飼養施設、設備、動物等を洗浄するための洗浄槽等)
- 消毒設備 (飼養施設、設備等を消毒するための消毒薬噴霧装置等)
- 汚物、残さ等の廃棄物の集積設備
- 動物の死体の一時保管場所
- 餌の保管設備
- 清掃設備
- 空調設備※1
- 遮光のため又は風雨を遮るための設備※2
- 訓練場※3
事業の実施に必要な権原の証明
飼養施設の建物並びにこれらに係る土地について、事業の実施に必要な権原を有していることが必要です。登録の際にはそれを証明する書類の提出が求められます。
土地や不動産を自ら所有している場合は、不動産の登記事項証明書、借りている場合は動物取扱業の営業を認める旨の記載のある賃貸借契約書などが書類の例になります。
飼養施設の構造・規模等
飼養施設の構造や規模に関する規定は以下のとおりです。
- 飼養施設は、本コラム「飼養施設に備える設備」に掲げる設備等を備えていること
- ねずみ、はえ等の衛生動物が侵入するおそれがある場合にあっては、その侵入を防止できる構造であること
- 床、内壁、天井及び附属設備は、清掃が容易である等衛生状態の維持及び管理がしやすい構造であること
- 飼養等をする動物の種類、習性、運動能力、数等に応じて、その逸走を防止することができる構造及び強度であること
- 飼養施設及びこれに備える設備等は、事業の実施に必要な規模であること
- 飼養施設は、動物の飼養等に係る作業の実施において必要な空間を確保していること
- 飼養施設に備えるケージ等は、次に掲げるとおりであること
要件はこちら
- 耐水性がないため洗浄が容易でない等衛生管理上支障がある材質を用いていないこと
- 底面は、糞尿等が漏洩しない構造であること
- 側面又は天井は、常時、通気が確保され、かつ、ケージ等の内部を外部から見通すことのできる構造であること※1
- 飼養施設の床等に確実に固定する等、衝撃による転倒を防止するための措置が講じられていること
- 動物によって容易に損壊されない構造及び強度があること
- 構造及び規模が、取り扱う動物の種類及び数に鑑み著しく不適切なものでないこと
- 犬又は猫の飼養施設は、上記に掲げるものの他、本コラムの「飼養施設の管理」、「飼養施設に備える設備の構造、規模等」、「飼養施設に備える設備の管理」に関する事項に適合するものであること
- 犬又は猫の飼養施設は、他の場所から区分する等夜間※2に当該施設に顧客等を立ち入らせないための措置が講じられていること※3。ただし、特定成猫の飼養施設については、夜間のうち展示を行わない間に当該措置が講じられていること※4
- 特定成猫とは次のいずれにも該当する猫をいう
要件はこちら
- 生後1年以上であること
- 午後8時から午後10時までの間に展示される場合には、休息できる設備に自由に移動できる状態で展示されていること
飼養施設の管理
飼養施設の管理に関しては、以下を遵守することが求められます。
- 定期的に清掃及び消毒を行い、汚物、残さ等を適切に処理し、衛生管理及び周辺の生活環境の保全に支障が生じないように清潔を保つこと
- 1日1回以上巡回を行い、保守点検を行うこと
- 清掃、消毒及び保守点検の実施状況について記録した台帳を調整し、これを5年間保管すること
- 動物の鳴き声、臭気、毛等により周辺の生活環境を著しく損なわないよう、飼養施設の開口部を適切に管理すること
- 動物の鳴き声により周辺の生活環境を著しく損なう事態が発生するおそれがある場合は、鳴き声が外部に伝播しにくくするための措置を講じること
- 動物の逸走を防止するため、飼養施設の管理に必要な措置を講じ、必要に応じて施設設備を備えること
設備等の要件
設備の構造、規模等
飼養施設に備える設備の構造や規模等に関しても以下のように規定されています。
- 臭気の拡散又は動物の毛等の飛散により、飼養施設の環境又はその周辺の生活環境を著しく損なう事態が発生するおそれがある場合は、空気清浄機、脱臭装置、汚物用の密閉容器等を備えること
- ケージ等の構造及び規模は以下の通りとする※1
規定はこちら
- 犬及び猫以外の動物のケージ等は、個々の動物が自然な姿勢で立ち上がる、横たわる、羽ばたく等の日常的な動作を容易に行うための十分な広さ及び空間を有するものとすること。飼養期間が長期間にわたる場合は、必要に応じて走る、登る、泳ぐ、飛ぶ等の運動ができるように、より一層の広さ及び空間を有するものとすること
- 犬又は猫のケージ等は次の通りにすること。飼養期間が長期間にわたる場合は、走る等の運動ができるように、運動スペース一体型飼養等又は運動スペース分離型飼養等によること
規定はこちら
1. 犬において一頭あたりのケージ等の規模は、縦の長さが体長の2倍以上、横の長さが体長の1.5倍以上及び高さが体高の2倍以上とすること※2
2. 猫において一頭あたりのケージ等の規模は、縦の長さが体長の2倍以上、横の長さが体長の1.5倍以上及び高さが体高の3倍以上※3とするとともに、ケージ等内に1以上の棚を設けることにより当該ケージ等を2段以上の構造とすること
3. 運動スペース一体型飼養等を行う場合は、ケージ等はそれぞれ次のとおりにすること
規定はこちら
1. 犬においては一頭あたり※4のケージ等の規模は、床面積が運動スペース分離型飼養等を行う場合のケージ等の一頭あたりの床面積の6倍以上※5及び高さが体高の2倍以上※2とすること
2. 猫においては一頭あたり※6のケージ等の規模は、床面積が運動スペース分離型飼養等を行う場合のケージ等の一頭あたりの床面積の2倍以上※7及び高さが体高の4倍以上※8とするとともに、ケージ等内に2以上の棚を設けることにより、当該ケージ等を3段以上の構造にすること
4. 運動スペース分離型飼養等を行う場合は、運動スペース一体型飼養を行う場合におけるケージ等以上の構造及び規模を有する分離型運動スペースを備えること
- ケージ等及び訓練場は、突起物、穴、くぼみ、斜面等によって動物が損害等を受けるおそれがないような安全な構造及び材質とすること。また、犬又は猫の飼養施設においては、ケージ等及び訓練場は、床材として金網が使用されていないものとする※9とともに、錆、割れ、破れ等の破損がないものとすること
- ケージ等及び訓練場の床、内壁、天井及び附属設備は、清掃が容易である等衛生状態の維持及び管理がしやすい構造及び材質とすること
- ケージ等及び訓練場は、動物の種類、習性、運動能力、数等に応じて、動物の逸走を防止できる構造及び強度とすること
上記のリスト内の記述は少し堅い表現ですが、要するに寝床等になるケージ等の規模は以下の表のようになります。
種類 | ケージ等の縦 | ケージ等の横 | ケージ等の高さ |
---|---|---|---|
犬 | 体長の2倍以上 | 体長の1.5倍以上 | 体高の2倍以上 |
猫 | 体長の2倍以上 | 体長の1.5倍以上 | 体高の3倍以上 |
体長と体高及び運動スペース一体型飼養に関しては令和3年6月1日より施行される改正動物の愛護及び管理に関する法律のお知らせ(抜粋)に掲載されている以下の画像がわかりやすいため引用いたします。
令和3年6月1日より施行される改正動物の愛護及び管理に関する法律のお知らせ(抜粋)
令和3年6月1日より施行される改正動物の愛護及び管理に関する法律のお知らせ(抜粋)
設備の管理
飼養施設に備える設備の管理に関しては以下のように規定されています。
- ケージ等に、給餌及び給水のための器具を備えること※1
- ケージ等に、動物の生態及び習性、飼養期間に応じて、遊具、止まり木、砂場、水浴び、休息等ができる設備を備えること
- ケージ等の清掃を1日1回以上行い、残さ、汚物等を適切に処理すること※2
- 糞尿に係る動物の衛生管理のため、ケージ等には糞尿の受け皿を備えるか、床敷きを敷く等の措置を講ずること
- 保管業者及び訓練業者においては、4に掲げるもののほか、飼養等をする動物を搬出するたびにケージ等の清掃及び消毒を行うこと
- 動物の逸走を防止するため、ケージ等及び訓練場に、必要に応じて施錠設備を備えること
- 運動スペース分離型飼養等を行う場合は、分離型スペースは、常時、犬又は猫の運動のために使用できる状態で維持管理を行うこと
おわりに
本コラムでは第一種動物取扱業の飼養施設に関して解説いたしました。
動物が可能な限り窮屈でなく、自然に行動できるようなスペースを十分にとっておけば基本的には違反となることは少ないように思えますが、こういった当たり前のことを記載するということはそれを守っていなかった業者がいたからということになります。
動物と人との共生のためにも、できるだけ動物にストレスを与えないように環境を整える必要があります。