はじめに
- Q近所のペットが虐待されているかもしれないけど確証がない。どうすればいい?
- A
虐待のおそれに関してはいくつか規定がありますが、中々断定するのは困難です。確証が得られなくともすぐに通報してください。
あなたが飼い主さんであってもそうでなくとも、例えば、近所に動物を飼っている人がいるとします。しかし、あまり良い飼育をしていないように感じています。そこには色々理由はあるでしょう。もしかしたら虐待の可能性もある。通報するか迷うがしつけの一貫と言われたらどうしよう。どうしますか?
本コラムはペット法務専門の行政書士が執筆しております。
ペット・動物に関する法手続きの専門家ですのでご安心下さい。
子供の虐待に限らず、ペットに対してもこういった不安はあるかと思います。本コラムでは少しでも虐待かどうかを明確にするために法令ではどのように規定されているのかを解説いたします
虐待の「おそれ」の規定
動物愛護法
動物愛護法では、一定の事態を生じさせていると認められる場合は、都道府県知事が必要な措置をとるべきことを命ずることや勧告することができると規定されています。以下が動物愛護法第二十五条第四項の抜粋です。
4 都道府県知事は、動物の飼養又は保管が適正でないことに起因して動物が衰弱する等の虐待を受けるおそれがある事態として環境省令で定める事態が生じていると認めるときは、当該事態を生じさせている者に対し、期限を定めて、当該事態を改善するために必要な措置をとるべきことを命じ、又は勧告することができる。
動物の愛護及び管理に関する法律 | e-Gov法令検索
次に環境省令で定める事態を解説いたします。
環境省令で定める事態
環境省令で定める事態とは「次のいずれかに該当する事態であって、事態を生じさせている者が、都道府県の職員の指導に従わない、又は状況把握を拒んでいることにより事態の改善が見込まれない事態」としています(一部表現を簡単にしています)。
「次のいずれか」には以下の6つの事態が具体的に記載されています。
- 動物の鳴き声が過度に継続して発生し、又は頻繁に異常な鳴き声が発生していること
- 動物の飼養等に伴う飼料の残さや動物の糞尿その他の汚物の不適切な処理や放置により臭気が継続して発生していること
- 動物の飼養等により多数のねずみ、はえ等その他衛生動物が発生していること
- 栄養不良の個体が見られ、動物への給餌及び給水が一定頻度で行われていないことが認められること
- 爪が異常に伸びている、体表が著しく汚れている等の適正な飼養等が行われていない個体が見られること
- 繁殖を制限するための措置が講じられず、かつ、譲渡し等による飼養頭数の削減が行われていない状況において、繁殖により飼養頭数が増加していること
すなわち、ペットのしつけ不足や、掃除の懈怠、給餌の不足、不適切な飼養、みだりにさせた繁殖などで保健所職員などから指導が行われたにもかかわらず、これに従わない場合や、そもそも指導に先駆けた現場確認等を拒否し、改善されない場合は都道府県知事により改善を命じられ、あるいは勧告される可能性があります。
虐待の規定
動物愛護法第四十四条第一項から第三項までは虐待と罰則の規定になります。当たり前ですが、ここに記載のある行為は「虐待のおそれ」ではなく「虐待」です。
第四十四条 愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、五年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する。
2 愛護動物に対し、みだりに、その身体に外傷が生ずるおそれのある暴行を加え、又はそのおそれのある行為をさせること、みだりに、給餌若しくは給水をやめ、酷使し、その健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束し、又は飼養密度が著しく適正を欠いた状態で愛護動物を飼養し若しくは保管することにより衰弱させること、自己の飼養し、又は保管する愛護動物であつて疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと、排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であつて自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管することその他の虐待を行つた者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
3 愛護動物を遺棄した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
動物の愛護及び管理に関する法律 | e-Gov法令検索
動物の虐待は立派な犯罪です。罰則も用意されています。もし、虐待かどうか疑わしい場合でも早急に通報してください。一つの命を救えるかもしれません。
通報窓口
虐待や虐待のおそれを発見した場合は確証が得られなくても構わないので通報してください。
通報先は警察、保健所、動物愛護センター等です。以下のリンクでは各地方自治体の動物虐待等の通報窓口一覧が掲載されています。
おわりに
本コラムでは動物の虐待のおそれに関して法令ではどのように規定されているのかを解説いたしました。
動物が虐待されているかもしれないと思ったら、証拠や確証がなくともすぐに通報するようにしてください。