はじめに
- Q自分が突然長期入院となったり、認知症になったときにペットのその後はどうすればいい?
- A
遺贈などでは飼い主さんの死亡によって効力が発動します。それに対し、ペットのための信託契約であれば、その旨契約書に含めることで長期入院などの事態が突発的に起こってもペットのお世話を新しい飼い主さんに託すことができます。
飼い主さんが突然亡くなってしまった時や、突然長期入院をしなくてはいけなくなり、一人暮らしであるがためにペットのお世話を誰もできないことが起こり得ます。
たとえ自分の年齢がまだ平均寿命には程遠く、ペットの平均寿命を考えても十分にお世話出来るからといって安心してはいけません。パートナーや家族と一緒に暮らしている場合はそれでも問題ないかもしれませんが、お一人でペットと暮らしている場合は、飼い主さんに急に何かがあったときペットの面倒は誰がみてくれますか。
本コラムはペット法務専門の行政書士が執筆しております。
ペット・動物に関する法手続きの専門家ですのでご安心下さい。
ペットの終生飼養のためにはいざという時に事前に備えておくことも重要であると考えます。
いざという時でも大切なペットの面倒をみてくれるようにしておく方法は主に3つあります。負担付遺贈、負担付死因贈与契約、そしてペットのための信託です。死後事務委任契約などもありますが、こちらは負担付死因贈与契約でも似たようなことができるので割愛します。
負担付遺贈と負担付死因贈与契約に関しては以下のコラムで解説しております。
本コラムではペットのための信託を解説いたします。
ペットのための信託
概要
ペットのための信託とは、財産を信用のおける人や団体に預け、新しく飼い主さんとなる人を見つけておくことで、いざという時には新しい飼い主さんが残されたペットの面倒をみてくれて、その際に必要な出費を預けておいた財産で賄うというものになります。
財産を預ける人や団体と、現在の飼い主さんとの間で信託契約を事前に結んでおく必要があります。
信託監督人
財産を預けた人や団体が、正しく財産を新しい飼い主さんに渡し、新しい飼い主さんは正しくその財産をペットのために使用しているのか不安になる場合は、信託監督人を置きましょう。信託監督人は信託財産の管理や飼育状況のチェックをしてくれるので安心できます。信託監督人には信頼のおける人や弁護士、司法書士、行政書士などの法律の専門家を指定します。
もし、信託財産を不当に使用していたり、希望する飼育方法で飼育されていない場合は信託監督人を設置していれば改善するように指示してもらうことができます。
ペットのための信託のメリット
飼い主さんの死亡以外でも契約の効力を発動できる
負担付遺贈や、負担付死因贈与契約は飼い主さんの死亡を契機に効力が発動するものです。それに対し、ペットのための信託は飼い主さんが認知症になってしまったときや、事故にあい意識不明となったときで死亡していない場合でも信託契約書をそのように作成しておくことでペットは新しい飼い主さんの元で面倒をみてもらえます。
また、負担付遺贈や負担付死因贈与契約では、残されたペットの細かいお世話の内容を指定することはできませんが、ペットのための信託ではかなり自由に指定することができます。トリミングの頻度や餌の指定などです。
残す財産はペットのためにしか使われない
信託契約書にペットの飼育のみに財産を使う旨記載することで、それ以外の用途に財産を使用することができなくなります。
また、信託財産は遺産とは別に扱われますので、相続のいざこざによってペットのために残した信託財産がなくなってしまうといった心配もありません。
ペットのための信託のデメリット
デメリットとしては信頼のおける人あるいは団体と新しく飼い主さんとなる人を見つけなくてはいけないこと。及び信託契約書を作成して締結しないといけないことになります。また、負担付遺贈や負担付死因贈与契約に比べて、専門家に依頼する場合は報酬額が高い傾向にあります。
おわりに
本コラムではペットのための信託に関して解説いたしました。
一番のメリットは飼い主さんの死亡のみが効果発動の契機ではなく、認知症なども含めることができる点だと考えます。ご自身の状況を鑑み、最も適した選択肢をご検討ください。